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最高裁判所第三小法廷 昭和48年(行ツ)40号 判決 1975年3月18日

上告人 樫本俊彌

被上告人 兵庫県知事 ほか五名

訴訟代理人 貞家克己 奥平守男 木下秀雄 高橋欣一 井上郁夫 ほか二名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人木崎良平の上告理由二及び三について。

自作農創設特別措置法三条による買収の対象ときれる農地とは「耕作の目的に供される土地」(同法二条一項)をいうのであるが、右農地に該当するかどうかは、土地の現況、耕作の有無及び態様、四囲の状況からみた土地の社会的に相当な利用目的その他諸般の事情を総合的に勘案して決定すべきである。そして、旧都市計画法(大正八年法律第三六号)一二条一項(昭和二九年法律第一二〇号による改正前のもの)による土地区画整理は土地の宅地としての利用を増進するために行われるものであるから、右土地区画整理施行区域に編入され、区画整理の工事も完了し、換地処分も行われた土地は、社会的にみて宅地として利用することが相当とみられる場合もすくなくない。しかしながら、右のようにして換地処分まで行われた土地であつても、右工事の程度いかんによつてはなお農地といわざるをえない場合がないではなく、また、所有者は、右換地処分後の土地を必ずしも常に宅地として利用しなければならないものではなく、これを農地として利用することもできないわけではないのである。したがつて、単に土地区画整理施行区域に編入されたこと、その工事が完了したこと、又は換地処分が行われたことのみをもつて、直ちに当該土地が農地の性質を失い、宅地化したものと解することはできない(最高裁昭和三六年(あ)第九三九号同三八年一二月二七日第二小法廷決定・刑集一七巻一二号二五九五頁参照)。当該土地が農地であるかどうかは、前示のような諸般の事情を総合的に勘案して客観的に決定すべきものである。この見地に立つて本件をみると、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件買収処分当時本件土地(原判決添付第一目録の土地をいう。)は農地であつたというべきであるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、採用することができない。

同四について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認しえないものではなく、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

同五について。

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 天野武一 関根小郷 坂本吉勝 江里口清雄 高辻正己)

上告理由<省略>

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